コンサルタント手記転職とは、人生を選び取るということ。
これは、医師の転職を導いたコンサルタントが経験した、
本当にあった物語。
Episode 161目指せ! 精神保健指定医(上)2014年12月15日 コンサルタントT
B先生は40代半ばの女性医師で、関西の私立医科大学をご卒業後、その附属病院で皮膚科医師として勤務されておりました。B先生の診療歴の中で、原因不明の皮膚科疾患の患者さんがおられ、後にこの方が「ミュンヒハウゼン症候群」という精神的疾患のため、皮膚の患部に自分の汚物を故意に付着させていたという原因が判明したご経験があり、精神科医療に強い関心を抱かれておりました。また、当時の大学の教授選で、他の国立大学から新しい教授が赴任されたこともあり、約4年間の皮膚科医師として勤務を終え、先輩医師の紹介で関西地区のある精神科医療機関にご転職されました。
この医療機関は、複数の病院と介護老人保健施設をお持ちの、関西有数の医療法人グループでした。B先生は素直で誠実な性格の持ち主でしたので、同医療法人内で、ある時は介護老人保健施設長として、また、ある時はご高齢の認知症患者さんたちの病棟管理などに従事されておりました。褥瘡管理や疥癬予防など皮膚科医師としての経験が活かせる分野では、本領を発揮され、また病棟管理などのお仕事では、真摯に内科や精神科(認知症疾患)の実践的な修練を積まれておりました。そのような訳で、B先生はこの医療法人内では欠くべからざる存在となっておりました。この医療法人でのご勤務が15年目を迎えようとしていたある日、ご自宅でPCをご覧になっていた際に、当社のe-doctorのサイトがお目にとまり、ご登録をいただきました。
早速、B先生に連絡を入れ、ご面談のお時間を作っていただきました。先生のお話では、15年間、一生懸命頑張ってきたが内科のお仕事も、療養型病床で経管栄養や尿道カテーテルなどの対応などはできるようになったが、内科医師としてはまだまだ経験が少ないし、精神科の医療機関には勤務していたが何の資格も得ていない。年齢も40を超えたので、この辺で自分の納得のいく仕事ができる医療機関に転職したいということでした。
先生は、5年以上の常勤医師としての医療実務経験(3年以上の精神科実務経験)をお持ちであり、精神科医療に多いに関心をお持ちで精神保健指定医の資格が取れる医療機関への転職をご希望されておられました。ただし、6疾患で8症例以上のケースレポートを提出するための精神科診療経験を殆どお持ちでない状況でしたが、私はB先生の熱意を感じ、先生のご希望に副える医療機関を見つけるべく活動を開始しました。B先生は独身で関西エリアであれば転居も可能とのことでしたので、当社に医師求人を頂戴しておりました何件かの医療機関に、B先生の匿名プロフィールを基に、求人の確認を行いました。精神保健指定医資格を取得されてから、直ぐに辞められる先生もおられるようで、反応が芳しくない医療機関も幾つかありました。
そのような状況下で、2件の医療機関よりB先生と一度お会いしたいというご返事を頂きました。1件は市街地に位置し、早くから地域に向けて解放化に努められてきた病院でした。面接は院長先生、事務長が同席され、特に問題もなく終了しました。1週間後、事務長より、「うちの病院は若い医師が多く、年齢に関係なく意見を言い合える環境です。B先生の年齢からすると年下の先生から指導や意見されることは、お互いに難しい面があるので採用は難しい。もしB先生が宜しければ、系列に認知症疾患専門病院があり、そちらでの採用検討は可能です。」との回答を頂きました。B先生に連絡しましたが、淡々と結果を受け入れておられました。認知症疾患専門病院でのご勤務は現状と変わらないのでご希望されませんでした。
当社に求人登録をいただいておりました、精神保健指定医資格取得可能な関西地区の医療機関はまだ2件程ありましたし、この時点でB先生のご転職が困難な道程になることは、予想だにしませんでした。