トップページコンサルタント手記Episode 133: 転科への決断(上)

コンサルタント手記転職とは、人生を選び取るということ。
これは、医師の転職を導いたコンサルタントが経験した、
本当にあった物語。

Episode 133転科への決断(上)2012年08月15日 コンサルタントL

K先生から問い合わせを頂いたのは、6月上旬のことだった。すぐに電話し、現在整形外科医として勤務しているが、今後内科と漢方に転科したいとのご希望で、「内科専門医と漢方専門医を取得できる施設を紹介して頂けないか?」とのリクエストだった。その週に先生にお時間を頂き、面談の機会を得た。これまで整形外科に専念していたが、5年程前から漢方内科に興味を持ち、独学で勉強をされたり、医師会の勉強会に参加したり、通信講座を受けたりされていた。しかしながら、まだ修行中なので、即戦力とは言えず、漢方内科を勉強できる認定施設へ転職し、将来的に漢方専門医を取得されたいとのことだった。

面談後、私は日本東洋医学会の認定施設リストをWEB上で全て探し出した。しかし、結果は大学病院と漢方クリニックが殆ど。民間病院でも何箇所か漢方の認定施設の病院もあったが、実際に漢方を診療科目として診療している所が殆どなかった。数えるとK先生の受け入れが可能な医療機関は7箇所しかなかった。大学付属施設の場合、経験に問わず研修を受けることは可能だが、K先生を取り巻く環境を考えると、非常に厳しい。K先生は現在45歳のため、大学に戻るとなると、周りの20代後半の後期研修医と約3年間の勉強と臨床研修しなければならない。年齢の差とK先生ご自身のプライドの事を考えると、大変な修練となる。更に、ご家族の事、生活の事、子育ての事を考えても、後期研修医となってしまうことで大幅な年収ダウンとなってしまう。

クリニックの場合、前回の診療報酬改定からクリニックでの診療は経営的に逼迫しており、外来患者数を多くしていかなければならない環境にある。更に漢方薬が全て保険診療として認められていないため、薬の処方も限られている。そのため、クリニックは漢方認定施設になっても、即戦力を求めている傾向が強い。漢方内科のベテランな医師ではなかったとしても、基本な一般内科外来程度を対応できる医師ではなければ、難しいのが実情だった。

整形外科から漢方内科への転科の問題、ご年齢の問題、そしてご家庭の問題、通常のご転職のお手伝い以上にクリアしなければならない点が多いため、現在ある求人を探すだけでなく、その全てを完璧にクリアできる求人を『創る』ことをしなければK先生にご満足頂くことはできないと悟った。

K先生の20年の整形外科医としてのスキル・経験を活かせる環境であること、漢方を勉強するため、20年位積んだ経験を白紙としてしまうことは、キャリア形成面や収入面から考えてもメリットがない。おそらく医療機関に対してもメリットがないのではと考え、今後は漢方の勉強をしながら、整形外科医としてキャリアを活かせる環境がベストだと考えた。K先生は病院に漢方を勉強目的で入職するが、今後の業務内容が整形外科半分と漢方内科半分の割合で勤務できることが、理想だった。

そんななか、以前ご入職をお手伝いした先生が頭をよぎり、この問題を劇的に解決させる方法が見つかることとなった…

 

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