コンサルタント手記転職とは、人生を選び取るということ。
これは、医師の転職を導いたコンサルタントが経験した、
本当にあった物語。
Episode 106家族のために(上)2010年05月15日 コンサルタントI
今年の2月、弊社がWEBに掲載をしている匿名求人へ、ある問い合わせが入ってきた。弊社には登録がない新規の先生だったため、御礼とご挨拶、当求人についての情報開示などを含め、私は先生へファーストコンタクトをとった。
O先生は外科医で、卒後、20年間医局に在籍し、医局人事にて関連病院を転々とされている。O先生の口調は終始暗く、電話越しに疲労感が容易に感じ取れた。先生の疲労感は、転職の理由と密接していると感じたため、私は「先生、今回こちらの求人へお問い合わせいただいた理由、ご転職をお考えになられている理由を教えて頂けませんか。」と切り出すと、先生の切実な思いを伺うことができた。
『医局に属し中核病院で働く勤務医が一番報われていないと思っています。私は外科医として一人でも多くの患者さんを助けたいという一身で、この科を天職だと思い選択しました。しかし現実は異なり、高い志で入局したもののリスクの高い患者を診て、昼も夜もなく一番たくさん働いて、休日もなく、そして、給料が一番安い。そうなると辞めることしか考えなくなります。このような病院で勤務する医師は医局から派遣されているケースがほとんどですが、そうすると、医局など辞めた方がずっと良いという考えになります。しかも、今、新人は医局に入らないし、同期の医局員達は、沈没船から逃げるかのようにどんどん医局を辞めていきます。正直、毎日が疲労困憊で、医師になったことは正しかったのかどうか、毎日自問自答していました。耐え難い時期もありましたが、臨床経験を多く積むには医局に属するしかないと思い、今まで頑張ってきました。しかし、現状を一生涯続けることはできません。いずれは医局を離れるつもりです。紹介会社を利用するのは初めてなのですが、リンクスタッフさんの求人情報はいつも見ていました。転職時期は未定ですが、転職したいという気持ちが固まったこと、私が独自で活動する時間や労力がないため、リンクスタッフさんに力を貸して頂きたいという思いで問い合わせをしました。』先生の思いに、コンサルタントとして必ずお答えし、結果を出しますと約束し電話を切った。
「転職時期は未定」とは“いつ転職できるか分からない”ではなく、“求人次第ではいつでも動ける”と私は考える。先生の転職条件を大きく分けると、
① 勤務地が都内ではなく郊外であること
② 急性期の病院は避けたい
③ 年収は1800万~2000万
④ 妻、子供が安心して生活できるような住環境
という条件だった。特に、O先生が重要視していたのが、住環境であった。O先生は、医局人事により勤務先を転々としていたため、現在は単身赴任で生活している。そのため、奥様には大変苦労をかけられており、子供にも申し訳ないと感じられていた。転職をして、ぜひ家族との時間を大切にしてもらいたいと思う。
転職の条件が、医療施設と交渉できるものと、今回のような、交渉不可能な住環境を重要視しているケースとでは、時間の掛かり方が違う。O先生にいかに短期間でご提案できるか。入職時期は別として、3か月以内に先生に形にしてお返しする(決定させる)という意識の下、マッチングを開始した。