コンサルタント手記転職とは、人生を選び取るということ。
これは、医師の転職を導いたコンサルタントが経験した、
本当にあった物語。
Episode 175大学医局制度の復活の兆し(上) 2016年02月15日 コンサルタントT
2004年度より開始された新医師臨床研修制度は、研修医の方々にとって、研修先を出身大学附属病院以外に市中病院からも自由に選択でき、スーパーローテート方式は様々な診療科を経験できるなどの大きなメリットが得られるものとなりました。
その反面、医局の持つ医師の派遣機能が損なわれ、医局自体の弱体化を招き、人材に余裕のない医局は関連病院に派遣していた医師を引き上げざるを得ず、地方や僻地の病院だけではなく医局制度に大きく依存していた病院にも医師不足の事態が起こりました。そして、
医局に残った勤務医の負担が増した結果、その勤務医も退職してしまい、より一層の医師不足や診療科の閉鎖・縮小を招くという悪循環に陥ることになりました。
こういった社会背景の中で、当社のような医師紹介斡旋会社には大きなビジネスチャンスが生まれ、現在のように多くの同業会社が乱立する事態に至りました。
今回のエピソードは、このような状況に警鐘を鳴らすようなお話です。
V先生は40代前半の糖尿病をご専門とされる内分泌内科医師でした。数年前に非常勤のお仕事をご希望され、当社にご登録をいただきました。V先生は中部エリアの大学医学部をご卒業後、出身大学とは違う医局に入局され、医局人事で数件の医療機関に勤務されておりました。大学医局人事に特に大きな不満もお持ちではありませんでしたが、次の医局人事先の医療機関は糖尿病患者が少ないのと、先生は糖尿病患者の栄養管理を重要視されており、内科系医師、外科系医師、看護師、薬剤師、理学療法士、言語聴覚士、歯科衛生士、臨床検査技師、管理栄養士、事務専門職員から構成されるNST(Nutrition Support Team)の体制がご希望にそえなかったこともあり当社を介しての転職を決意されました。
早速、V先生のご希望エリアで何件かの医療機関を案内しました。その中で、A病院とB病院が先生のお目に留まりました。しかしながら、B病院はV先生の大学医局と少なからず繋がりのある病院でしたので残りのA病院の面接を実施いたしました。当然ながら即採用で、先方理事長も三顧の礼をもってV先生をお迎えしたいとのご意向でした。
V先生の方も、大学医局人事でB病院に勤務することも吝かではなかったが、そこまで言っていただけるのであればA病院に決めると快諾していただきました。早速、半年先の入職に向けて、教授に話して了解を得るとのことでした。数日後、V先生からA病院に入職の方向だが重要な条件があるという連絡がありました。運よく翌日、V先生とのご面談する機会を得ました。ご面談時にV先生が話されたA病院への入職条件というのは、十数年を超える私のコンサルタント経験でも初めての内容でした。