コンサルタント手記転職とは、人生を選び取るということ。
これは、医師の転職を導いたコンサルタントが経験した、
本当にあった物語。
Episode 1405年越しの転職(上)2013年03月15日 コンサルタントT
H先生に私が初めてご面談させて頂いたのは、2007年7月のことでした。
H先生は関西圏の国立大学を1980年にご卒業され、ずっと医局人事で13件の病院に勤務されていました。ご専門は消化器外科で、上部消化管内視鏡(GE,ERCP)(食堂静脈瘤結紮、早期胃癌粘膜切除出血性胃潰瘍止血術)、胆道内視鏡、下部消化管内視鏡 (colorfiber、ロマノスコピー)、検査については腹部、乳腺、甲状腺超音波検査 (US下種瘤アルコール注射)、また、手術に関しては乳癌、胃癌、大腸・直腸癌、腎癌等、根治術や透析バイパス手術もできるという非常に経験豊富で有能は外科医でした。
転職の動機について先生は、「現勤務先に約6年位勤務しているが、暇だし給料が下がってきているので大阪市内の自宅から通える医療機関で良いところがあれば紹介して欲しい。」と率直に仰いました。
面談終了後、先生のご自宅からアクセスが良く、先生のスキルが活かせるような、医療機関をメールにて数件ご案内しました。翌日、先生の携帯に連絡を入れたところ、先生からのご回答は、「どの病院も医局の知り合いが院長や部長で勤務しているので難しいね。他に案件無いの?」とのことでした。それから、いろいろな医療機関に問い合わせをして、H先生にご案内させて頂きましたが、どれもH先生の関心を引く案件はありませんでした。
そうこうしているうちに、ご面談して頂いてから約1ヶ月たったころ、先生から一通のメールが私宛に送信されてきました。内容は、「この間、大学医局の同門会に出席したところ、以前勤務していた医療機関の院長から誘われている。ちょうど阪神大震災当時に勤務した病院で、震災当時は野戦病院みたいな雰囲気だった。当時のなつかしいメンバーとまた一緒に仕事するつもりだ。」というものでした。後悔先に立たずで、成約に繋げられなかった自分の実力に無さを痛感しました。
それから、H先生から再びお電話を頂いたのは、5年後の2012年の師走のことでした。
あまりにも時間が経っていたので、私も新規エントリーの先生かと思っていましたが、話をしていて、H先生も私もことを覚えて戴いていたようでした。先生は「あの時はいろいろありがとう。結局、誘われた病院には行かずに今も当時の病院に勤務している。もう11年になるね。私ももう57歳だし、現勤務先の理事長からも60歳になったら給料を下げると言われている。理事長の息子も医師で東京から帰ってきていろいろ仕事がやり難くなった。また、いいところ紹介してよ。」
私も今度は成約させる意気込みで、案件を必死に探しました。しかしながら、前回と同様、外科系の求人は大学医局の関連が強く、なかなか良いところがみつかりません。たまたま、奈良県で医師を急募されているケアミックス型の110床のA病院がありましたので、そこへH先生の匿名打診を行うことにしました。