コンサルタント手記転職とは、人生を選び取るということ。
これは、医師の転職を導いたコンサルタントが経験した、
本当にあった物語。
Episode 130譲れない希望(下)2012年06月01日 コンサルタントT
O先生から入職辞退の連絡を頂いてから、幾度となくO先生へ連絡を入れたが、まったく繋がらない状況が続いた。
確かに専務理事と面接前に打ち合わせした内容と、面接時に理事長が説明された内容があまりにも違っていたが、理事長のサポート役として本院での勤務を希望されている訳ではなく、常勤医師やスタッフとしっかりコミュニケーションを取って頂いた上で、クリニックに勤務して頂きたいという法人側の意向を、O先生は先輩からの絶対的命令と捉えていた。
私は再度O先生に検討して頂けるよう、S会へ訪問した。専務理事へ面接後の状況報告を済ませた後、「O先生は、勤務内容があまりにも事前の説明と違っていたので、戸惑われていらっしゃいます。辞退の申し出がありましたが、誤解を解くためにもう少しお時間を頂けませんか?」と専務理事に提案をした。専務理事もぜひ受け入れたいという気持ちが強かったので、理事長にO先生の希望内容で受け入れて頂けるよう協力頂いた。
それから何度か、O先生に誤解を解く為連絡を入れたが、返信がないまま1ヶ月が経ったある日、状況が一変した。O先生から「もう一度、S会に伺いたいと思っています。まだ募集は継続していますか?」というメールが来たのだった。早速、O先生に確認の連絡を入れると、私が送ったメールを読まれ、実際どちらで受け入れを考えているのか、もう一度確認した上で、入職を決定したいという意向をお持ちだった。
翌日、O先生の意向を専務理事にお伝えし、あくまで労働条件と院内の雰囲気を確認するという名目で、面談の設定を依頼したところ、「もちろん」と快諾して頂き、また医師から見た病院をより細かく知って頂く為、常勤医も同席する形で設定して頂ける事になった。
そして面接から2ヶ月後、O先生と2人で、再度S会へ伺った。O先生のご希望だった当直日誌、輪番日誌、電子カルテも全部閲覧して頂き、常勤医と別室に入り、病院の状況を説明して頂いた。その後、専務理事から本院勤務について、「S会としては、まずは本院に慣れて頂き、常勤の先生方やスタッフとコミュニケーションを取って頂いた上で、クリニックの管理医師として受け入れたいという意向です。ご安心ください」と説明があった。ようやく誤解だったと解ったO先生は、S会の誠意ある対応に感激し、その場で入職することを決意された。
S会から提示があった労働条件は、週4日勤務、基本年俸1,500万円、評価賞与年1~2回(100万円前後)、家賃補助月額10万円まで支給となり、現職年俸よりも200万円アップとなった。そして転居代全額支給、入職後1~2年後にクリニックの管理医師になる事、学会参加は年7回まで可能、学会参加費用全額支給、研究費用別途支給という内容だった。担当業務は、腎臓内科予約制外来、本院透析管理はO先生一人でなく現状通り、外来透析患者回診は検査日含めて持ち回り、夕診なし、当直なしとなった。
ずっと地方大学の医局でご勤務されていたO先生に対し、今回ご入職されるS会は、誠心誠意O先生にお越し頂きたいという対応を最後まで示して頂いた。
O先生にはS会のご期待に応えられるご活躍を心から願うと共に、私自身あらゆる医師のニーズに正面から向き合えるコンサルタントとして、今後も日々精進していきたい。