トップページコンサルタント手記Episode 111: 69歳の産婦人科医師の旅立ち(下)

コンサルタント手記転職とは、人生を選び取るということ。
これは、医師の転職を導いたコンサルタントが経験した、
本当にあった物語。

Episode 11169歳の産婦人科医師の旅立ち(下)2010年11月01日 コンサルタントT

二度目の面談では、求人案件を提供するよりも、A先生が今まで仕事上で経験されたことや、苦労なさったことをお聞きすることに注力しました。A先生とのお話の中で過去の福島県立大野病院産科医逮捕事件が話題にあがり、A先生は「あの事件は日本の産科医師を震感させたね。私も35年間産婦人科を開業していて、あの事件とは状況が違うが、1件だけ胎盤剥離中の妊婦の大量出血の処置を経験したことがある。多量にガーゼを押し付けても、Z縫合しても出血が全く止まらなかった。幸いにも近所に赤十字病院があったので転送してその場は事なきを得たけどね。ただ、この妊婦は後に腎不全になったと聞いたけど・・・」と悲しそうな表情で話されました。また「妊娠・出産は病気ではないので、誰しも子供を授かったら、母子ともに無事で健康な赤ちゃんが生まれてくるものだと思っている。当たり前の話だけど。ただね、そんなに頻繁なことじゃないけど、自然の摂理で何万分の一かの確率で先天性異常などの子が生まれてきたりすることがあって、告知して、慰めたり、励ます時は本当に辛かった。病院だったら小児科の先生の仕事かもしれないけどね」と、産婦人科を開業されていた当時の苦労話をしてくださいました。最後にA先生は「今度生まれ変わって医者になっても、産婦人科医には絶対にならないね」と笑いながら仰いました。

私も、先生方のいろいろな話をお伺いしましたが、今回は産婦人科医の仕事の大変さを改めて痛感しました。先生のお話を基に、違う観点で求人を探し始めると、ある一件の施設が目に留まりました。そこは、神戸市の北部にある、生まれつき重度のハンディを負った方々のための施設で、仕事の内容は入所者の診療や健康管理でした。最初この案件をA先生にご紹介したところ、昔のことを思い出されたのか躊躇されていました。しかし、もう1社の方でもなかなか良い案件が見つけられないということもあり、「とりあえず、面接という堅苦しいものではなくご見学ということで、一度お時間を割いていただけませんか?」という半ば強引な私の提案に同意して下さいました。
その施設は明るくて開放感と清潔感あふれる建物で、医療設備や機器なども明らかに高額で、高性能なものが並んでいました。また、医師やコメディカルも若い方が多く活気に満ちていました。案内して下さった院長は、A先生に「御覧のように入所者の方々は生まれてからずっとこの施設で過ごされています。当然、発達もされますので、婦人科領域の検診や診療が必要になります。A先生のように産婦人科で豊富なキャリアをお持ちの先生は大歓迎です」と熱く招聘の意を述べられました。また、病棟見学時には車椅子に乗った女の子がA先生の方をにこにこしながら見つめていました。

帰路、A先生に「いかがでしたか?」と尋ねると、先生は「一日時間をくれないか」とのことでした。翌朝一番に、A先生から「昨日行った施設に勤めることにするよ」と電話が入りました。「私は産婦人科医として45年間、生命の誕生に立ち会い、色々苦労もあったがやりがいのある仕事だった。残りの医師生活は身体にハンディを負ってこの世に生を受けた方々への診療という、社会的に有意義な仕事に捧げたい」と弾んだ声で話されました。

給与は当初先生がご要望されていた年俸1500万円にほぼ近い1480万円で、通勤も1時間以内と当初のご要望にお応えするご紹介ができました。

A先生は産婦人科医として、45年間、生命の誕生に立ち会い残りの医師生活を身体にハンディを負った方々への診療という社会的に有意義なお仕事を選択されました。
今回のコンサルティングでは「社会貢献」という言葉の意味を再考させられました。A先生のご活躍とご健勝を心より祈念するばかりでございます。

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