トップページコンサルタント手記Episode 107: 優先すべき事(上)

コンサルタント手記転職とは、人生を選び取るということ。
これは、医師の転職を導いたコンサルタントが経験した、
本当にあった物語。

Episode 107優先すべき事(上)2010年06月15日 コンサルタントY

昨年12月の中旬、上司より一人の医師を担当するように指示を受けた。その医師は30代前半、都内在住の眼科医師で、面談の設定は容易に行えたが、メールでのやり取りのみだった為、多くは語られず、その時点では転職を検討する事情が全く判らなかった。

面談の当日、予定より少し早く待ち合わせ場所に到着した私は、これから会う医師がどういう人物かなど不安を感じつつ色々と考えを巡らせていた。そこへ「リンクスタッフの方ですか?眼科医のEです。」と現れたのは、それまでの不安を一瞬でかき消す好青年でした。私も「担当させて頂きますYです。」と挨拶を済ませ近くの喫茶店に入り早速E先生の転職を検討する事情を伺う事になった。

E先生は「現在、大学の医局で勤務しています。2年前に結婚し10月に子供も生まれました。今年ようやく専門医も取れたので、これから色々と技術を身に付けたいと思っていたのですが、今月に入ってすぐ教授と医局長に呼び出され来年度はN県の市立病院に行ってほしいと言われました」と肩を落とされていた。医局に属している医師にとってこの時期にはよくある話ですし、私としても驚く事ではないので、「そうですか。確かにN県だと都内から毎日の通勤は難しいですね。奥様はなんて仰っているんですか?」と続きを聞く事にした。

「現在の住まいの近くに妻の両親が住んでいます。今年初めての子供が生まれたばかりなので、妻としては今の環境を変えたくないと言っています。あと医局長からは期間としては1年を考えていると言われました。だから大学や教授には色々と恩がありますが、これを機に退局しようと思いました。今は週6日の勤務で給与も高い訳ではないので、今の家から通える距離なら高い条件は要求しません。経験の少ない私でも受け入れてくれる所はありますか?」と不安気に聞いてきた。私としては納得できる理由でしたし、なによりも印象がいい先生でしたので「任せてください」と答えました。最後にE先生より「可能であれば白内障のオペを今後もしたいと思うのですが、まだ一人で任されるには自信がないので、指導などをしてくれる所が望ましいですね」と付け加えられた。オペを避けたいというマイナス要因ではなく、前向きな条件なので私は快諾し「なるべく早くE先生の要望に近い求人を見つけてご連絡します」と伝え面談を終了しました。会社へ帰る最中に約束した以上、早急に探して安心してもらいたいと考えておりましたが、その機会は思った以上に早く訪れました。

翌日の夕方、毎日の日課としてリンクスタッフに登録している先生方の近況確認の電話をしていたところ、眼科のR先生と対話する事となった。数年前までリンクスタッフの紹介で度々眼科検診などの非常勤勤務をしていただいていたが、数年前に開業したとの事でした。きさくな先生でしたので少し話を続けていたら、R先生から「今は忙しすぎて検診のバイトは出来ないですね」と言われた。R先生との会話の中でE先生の件が頭によぎった私は「どちらで開業されたんですか?」と聞くと「S県です。」との事。S県なら都内から通勤に1時間も掛からないしダメで元々と思い「先日すごく人柄のいい眼科の先生に会ったんですが、そんなにお忙しいなら常勤の先生を募集する気はないですか?」と言うと「何歳くらいの方ですか?」と意外にも興味を持ってくれた。その数日後、R先生に時間を頂戴しクリニックに訪問しE先生の相談をしました。R先生は「いずれは2診体制にしたいと考えていました。だけどそうなると最低限の費用は掛けなくてはならないから、もしその先生がうちのクリニックを希望するなら、私の条件は私のパートナーとして長く勤務してくれる事かな。OKする約束は出せないけど一度会って話してみましょうか?」と言ってくれました。「年俸や他の条件は、今より下げる気はないので条件提示は面談後でいいですか?」とR先生が仰ったので、E先生の要望にあった白内障のオペについて質問をすると「オペは私で良ければ教えられますし、少しずつやってくれればいいですよ。」との答えを頂戴し安心したので、「まずE先生に提案し意向を伺わせてください」とクリニックを後にしました。私は条件というよりもE先生と、6つ年上のR先生との相性がよさそうな所に好感触を受け、その夜E先生にその日の内容を伝えた。E先生からは「ずっと病院勤務で、未経験のクリニックとなると不安はありますが、Yさんの話を聞くといい先生のようですし、行動しない事には話が進まないので面接の日程を決めてください」と面接の了解を戴けた。

双方の予定を調整し一週間後に面接の日取りを組み当日を迎えました。久しぶりの面接だからか緊張した顔をしたE先生に「今日は条件交渉などありませんし、趣旨としては顔合わせのような場だと思ってください。R先生はきさくな方だから大丈夫ですよ」と言葉を添えてクリニックに入りました。E先生が「本日は面接の機会を頂戴し有難うございます」というとR先生は「面接なんてヤメてください。今日は気軽に話しましょう」と明るく招き入れてくれた。その後も面接らしい話は最初の10分くらいで、殆どが学生時代のスポーツの話などの雑談でした。笑顔のまま40分くらい話を交わした後にR先生から「じゃあYさん、少し時間を貰いお返事してもいいですか」と言われたので、E先生と二人で「宜しくお願いします」と面接は終了しました。駅まで歩く間、E先生は明るい顔つきで「なんか院長というよりは部活の先輩みたいでした。あの院長とだったら気持ち良く仕事が出来そうです。今が週6勤務の1100万円ですから、それ以上でしたら即OKを出してください。」と余程気に入ったのか即決でした。

次の日、R先生にメールで昨晩のお礼と、E先生の気持ちと条件を伝えました。私としてもいい感触を感じていたので、R先生からの返答を心待ちにしていた所、さらに2日後の夜、会社にR先生から連絡があり「先日はありがとうございました。仕事の話は大してしなかったけど、いい先生だという事は非常に解りました。E先生に今後とも宜しくお願いしますと伝えてください」との言葉を貰った。条件も私が大きく期待し過ぎてしまったので私の予想は若干下回ったものの、E先生の現状よりは大幅アップとなった。私も自分の事のように喜び「こちらこそありがとうございます。早速E先生に伝え契約書の作成をさせて戴きます」とR先生との電話を切り、間を空ける事なくE先生の携帯に電話をかけた。「E先生、遅くにすみません。今R先生から連絡があり入職の了解といい条件を貰いました」と条件を伝えようとした所、E先生に話を遮られ予定していない言葉を聞く事となる。

 

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