トップページコンサルタント手記Episode 99: 前向きな環境への転職(下)

コンサルタント手記転職とは、人生を選び取るということ。
これは、医師の転職を導いたコンサルタントが経験した、
本当にあった物語。

Episode 99前向きな環境への転職(下)2009年11月01日 コンサルタントN

翌週、Y先生から携帯電話に着信があった。毎回、丁寧に連絡を下さる先生なので、「来週から勤務します」という類の連絡かと思いながら、話をしていると、どうもいつもと少し違う雰囲気が感じられる。紹介業を長くやっていると、直前でのキャンセルも数回経験しているだけに「まさかキャンセル」、「いや、この先生に限って、有り得ない」という思いが錯綜する。「Y先生、何か不都合でもありましたか」と伺うと、少しの間を置いて「最初のお電話で常勤先の勤務状況はいかがですか?とおっしゃいましたよね。その件で相談があって、お電話しました。今、大丈夫ですか?」
移動中であったため、後から電話をさせていただくことを伝え、一旦電話を切った。
常勤先で何かあったのだろうかと気になった。

会社へ戻り、すぐにY先生へ電話をする。
「常勤の勤務先についての相談なのですが、現職に100%の満足をしていないと伝えましたが、縮小傾向で、やはり芳しくありません。これまでは上層部のみの話だったのですが、徐々に現場にも下りてきました。昨年、院長が交代し、それに伴って、方針も変りつつあります」
Y先生は前向きな環境の中に身を置き、これまで同様の職務を全うしたいという思いが強く、「このままではいずれモチベーションが下がっていくことが容易に想像できる。低いモチベーションの中で業務をすることを良しとしない」などと、おっしゃった。

この時点で、私は一つの提案を持っていたが、Y先生を誘導することは避けたいので、改めてY先生の考えを伺った。
「了解しました。よくない状況だと思います。では、先生としましては、現時点でどのような選択肢をお考えですか?」
Y先生の答えは2点あった。このまましばらく様子を見ることと転職をすることである。「いつ頃まで様子を見るのが得策か」という私からの問いに対しては、「それは全く分からない」と答えられた。そこで私は「仮に産婦人科が廃止になったり、もしくは個々の先生方の意思が働かない局面になりますと、半ば病院側による恣意的な他院への異動となってしまいます。そのような焦りを醸成する状況の中で転職をしていただきたくない」とお伝えした。ある意味、私の身勝手な考えかもしれないが、先生も賛同して下さった。

改めて、H病院に対する先生の印象を伺ったところ、「H病院さんには私の知り合いもいまして、働きやすい環境だと聞いています。先日の面談での印象もとても良いですし、分娩件数なども安定しています。今、いらっしゃる先生方の業務負担を減らしてあげたいというのが求人背景とも聞いていますし、知り合いも同じことを言っていました」、「少なくとも現状は縮小傾向は一切ないですし、前向きにやれそうです」とおっしゃった。ここまで伺えたので、私は「細かくお聞かせ下さいまして、ありがとうございます。もう先生の中で答えが出ているのではないですか?」と尋ねた。
それに対するY先生のお答えは非常に明確だった。「そうです、そうですね、そうなんです。H病院さんへ常勤で移れればと思っています」
そして私は初めて、面談後の事務長からの「Y先生、常勤で来ていただければ、大変ありがたいのですが…」という言葉を先生へ伝えた。

Y先生の非常勤勤務が始まるまでの間に、別件で北陸地方への出張予定も入っていたため、翌日、H病院の事務長へ連絡をし、非常勤勤務の契約書締結の場という名目で、Y先生、院長先生も交えた面談を再度、設定した。
面談当日、定刻30分前にY先生と落ち合い、近場の喫茶店で初対面を果たした。想像していた通り、素晴らしい先生で、改めて今回の御礼を述べた。一方、面談の事前打ち合わせという目的で定刻前にお時間をいただいたのは懸念される点があったためだった。
懸念される点とは先生の現職年収とH病院の想定年収に開きがある可能性が高いということだ。より良い条件を提示いただくため、「私から常勤入職の依頼はしません。先生からも触れないで下さい」というお願いをした。さらに「常勤で来ていただけると有り難いという思いが病院側にあるにせよ、立場が変われば、動きも変る可能性があることは否めません。それ程、リレーションの深い病院でもないため、読めない部分もあるのです」と付け加えた。

非常に和やかな雰囲気で、面談が始まった。事務長、院長も素晴らしい人柄だった。世間話のような会話が続き、契約書締結の段になって小休止となった。ここで院長先生が思い出話を語るかのように「いやあ、残念ですよ。先生が週1回の非常勤ですからね。常勤で助けていただければと思っていたのですが」とおっしゃった。
そこで私は、先生の状況や意向などの概略を先方へお伝えし、後は直接、先生のお言葉で語っていただいた。先生のおっしゃった内容は上述の通りであり、院長先生も事務長も理解を示して下さった。そして院長が渡りに舟のようなことをおっしゃった。
「分かりました、先生。大変なご状況ですよね。手前味噌で、先生の病院を批判するように聞こえてしまうと申し訳ないですが、当院はそのような状況ではありませんし、求人背景も先日お伝えした通りです。先生、当院で一緒にやっていただけますか?」
多少の緊張を隠せないでいたY先生だが、院長先生からの具体的な言葉を聞かれて、安心されたのか、普段通りの雰囲気に戻られ、「ありがとうございます。是非とも、お願い致します」と返答された。
懸念していた給与条件については、後日、数回のやり取りはあったものの、Y先生の希望条件通り、週4.5日、年俸2,000万円、当直なしとなり、常勤でも更年期外来をさせていただけることに決まった。

常勤でのご入職前日、いつもながら丁寧な連絡が先生からあった。Y先生の新天地でのご活躍を心からお祈りしたい。

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