トップページコンサルタント手記Episode 92: 伝わった熱意(下)

コンサルタント手記転職とは、人生を選び取るということ。
これは、医師の転職を導いたコンサルタントが経験した、
本当にあった物語。

Episode 92伝わった熱意(下)2009年04月01日 コンサルタントO

一方、R病院との交渉は比較的スムーズに進んだ。なにしろ急を要する状況である。勤務内容・待遇・給与など、ある程度の条件を聞いて下さるとの事だったので、週4日勤務を提案したところ、了解して頂けた。さらにR病院からは、外来のみで入院患者を持たないこと、そして勤務内容に比して破格の1,600万円以上という年俸の提示もあった。
通勤時間、年俸もさることながら、「入院患者を持たない」という条件は課題をクリアするに十分であろう。私は自信を持って、T先生に伝えた。ところがT先生は「確かに条件は良いですね」とおっしゃりながらも、歯切れの良さはない。T先生はやっと重たい口を開いて下さった。

「病院内には多くのドクターがいる。私がその条件で入職したら、『なぜ、あの先生だけ入院患者を担当せず、当直もしないのか』と言われる。そうしたら間違いなく、居づらい雰囲気になる。これまで逆の立場で何度もそんなケースを見てきた」
私には返す言葉がなかった。沈黙が続いていると、T先生が明るい声で「でも、そこまで私のために交渉してくださっていること、そしてR病院から必要とされていることは嬉しいよ」とおっしゃって下さった。
そこで、その日の話合いを切り上げたのだが、私には一つの案があった。それは、あくまでも非常勤医師としての立場で勤務して頂くというものだ。そのことで常勤の先生達とは一線を引き、当直を免除され主治医にならない事などへの感情を緩和しようと考えた。
R病院に提案したところ非常に歓迎され、T先生にも伝えた。T先生もこれには納得して下さったようで、「院長先生とお会いしたい」とのこと。私は院長先生の後押しに期待をつないだ。

面談の場では、院長先生が糖尿病医療への思い、病院の今後の方向性などを詳しくお話された。そして施設の見学も院長先生自らが案内して下さった。T先生にR病院の熱意が伝わらないはずもなく、気持ちはかなり揺らいでいるように見えた。しかし、課題が全てクリアされたわけではなかった。急性期病院への不安に加えて、勤務先のクリニックを無事に退職できるのかという事である。面談は11月だったが、R病院は2月からの着任を希望していた。「せめて半年先であればなあ」と、T先生はR病院を振り返りながら呟かれた。
ここまで来たら、コンサルタントとして出来る事は条件面を上乗せする事でも、ひたすらお願いする事でもない。最後にT先生の心を動かし、背中を押す一言を伝え、T先生の決断を待つ事である。

1週間が経過した。R病院からは何度も連絡が入り、T先生も悩んでおられる。私は、その一言を伝えるべき時が来たと思った。
「T先生、不安な部分を全部おっしゃって下さい。全部解決します。あの糖尿病センターこそ、T先生にふさわしい場所です」
翌日、T先生から連絡があり、転職を決断したと伝えられた。ただし、これから退職の手続きを始めるので、2月に着任するのは無理だという事を付け加えられた。
しかし、どうやら最後の一言は私ではなく、奥様だったようだ。毎日の通勤の大変さを心配しておられたという。「近くの病院に勤務していることが家族としては安心。そして専門分野で力を発揮出来るのは何よりで、何も心配ないのでは」とおっしゃったそうだ。

結局、非常勤医師として外来のみを担当すること、そして年俸1,700万円で、3月に入職となり、R病院からは非常に感謝された。T先生にも、そして奥様にも満足して頂ける転職をお手伝いでき、コンサルタント冥利に尽きる経験ができたのだった。

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