コンサルタント手記転職とは、人生を選び取るということ。
これは、医師の転職を導いたコンサルタントが経験した、
本当にあった物語。
Episode 65大学病院での勤務中に考えたこと(上)2006年12月15日 コンサルタントA
J先生は、出身でもある四国地方の某国立大学付属病院に勤務されている40歳代前半のドクター。専門は麻酔科で、大学をご卒業後医局に在籍され、約15年間ひたすら麻酔のスキルを磨いてきたという。今の1200万という待遇には満足されていたが、先般の新しい臨床研修制度に変わってからというもの、特に四国地方では入局者が激減。毎日のように手術麻酔を何件もかけもち、且つ後進の医師を指導しながらICUの管理や時間外の緊急手術など、馬車馬のように働いているとの事であった。
三回目にお会いした際、「このままでは医療事故をおこしかねない。麻酔医なら誰もが経験しているとは思うが、手術中ヒヤリとした事が過去に何度もあり、日々の忙しい中で集中力を維持するのも、45歳を目前にしてもう限界です。」との言葉を聞いたことが、とても印象に残った。面談が終わってからのJ先生の顔は、とても晴れやかで少し気持ちが楽になっているのではと感じた。やはり、人間誰しも一人で考えすぎて抱え込むより、人に話すことにより気が楽になるものである。
再度お会いさせて頂いた際に、四国内では整形外科で有名な民間病院Aをご提案する。そのA病院は、全身麻酔での手術件数は大学病院に比べて4分の1、現状は常勤医2名と非常勤医が週に3日という体制で麻酔を担当されており、何より私が注目したのがペインクリニックを病院の前に開設したいというお考えがあるという事であった。J先生も率直に興味を示されたが、一言「教授に何と言われるかなぁ。間違いなく止められるし、違う大学から非常勤の派遣を受けているというのも、病院名を言えばすぐに分かる事だし、気持ちよく送り出してくれるとは・・・。」と、本音をもらされた。まさに、J先生の言う通りで、特に地方で医局制度が崩壊しているなどと近ごろ報道はされているが、古い体質はすぐに変わるものではない。間違いなく、教授に話をすると止められるだろうし、良い顔はしないだろう。しかし、J先生が大学病院での勤務中に考えられたこと、「医療事故を起こしたくない・・もう限界・・」という言葉を、考えた上での提案である。少しだけ・・ものの3分くらいであろう考えられた後、「今回の、転職して環境を変えたいというのは、突発的に考えた事じゃないし、ずっと考えていた事。ここで動かないと5年後も同じ事を考えているでしょう。お任せしますので、話を進めてください。」と、気持ちの良い返事を頂き、面接の運びとなった。