トップページコンサルタント手記Episode 107: 優先すべき事(下)

コンサルタント手記転職とは、人生を選び取るということ。
これは、医師の転職を導いたコンサルタントが経験した、
本当にあった物語。

Episode 107優先すべき事(下)2010年07月01日 コンサルタントY

「実は大変勝手な話で申し訳ないんですが、今回の話を一旦白紙にして貰えませんでしょうか。YさんとR先生には私の為に時間を割いて貰ったのにすみません。」私は一瞬頭の中が真っ白になったが我に返り「どうしたんですか?」と当然の質問をした。E先生は「実は面接の翌日から、退局する事を改めて意識するようになったのですが、年末になって私の代わりを探すのだって大変でしょうし、教授や医局長には凄く恩も義理もありますので、我が侭を言ってはいけないと思ってしまいました。」とまるで別人かと思う程暗い声で理由を教えてくれた。「では4月からN県に行くと決められたのですか?奥様はご納得を?」「いえ、まだ妻と話し合っていますが、先にYさんとR先生には断らないと失礼かと思いまして」

最初に会った時と違い転職に前向きではなくなっているので、今この場で説得をしても無駄だと思った事と、正直言って適切な言葉が全く思いつかなかった事を理由に、私はその場を仕切り直したかった。「先生、直接お会いして話しましょう」と伝えると、明後日ならと了承を得られたので電話を置いた。

翌日は、E先生の事を考えると他の仕事が殆ど手に付かなかった。若い医師が医局を抜けるとなると当然あたる壁ですし、仮に退局の申し出をしても大抵の医師は説得される。余程強い決断をしなくてはスムーズに了解を得られるはずがない。あまりにもトントンと話が進んだ為に配慮していなかった私のミスである。家族の事を考えれば昨晩のE先生の判断は最良とは言えないが、先生ご自身の転職なのだから説得するというのもコンサルタントの仕事ではないとも思った。結局良案が思いつかないままその晩、報告をしようとR先生に連絡をする事にした。すると「そうですか。私も退局する時は大変でしたからよく解ります。医局を抜ける事が正解という訳ではないですし、E先生が家族と決めるしかないんじゃないですか。まあまだ悩んでいるそうですし、最終的な返事を待ちますよ」と言ってくれた。その言葉を聞いて私は妙に納得しました。そして変に言葉を考えるのではなく、E先生に素直に思った事を伝えて決断は任せようと踏ん切りが付きました。

面談の日、E先生はまだ暗い顔をしていました。「今は、先輩の先生も同じような勤務をしている訳ですし、1年の期限付きですからやむを得ないのかなと思っています。」と一昨日と同じ理由に付け加えましたが、自分自身を説得しているようにも感じました。奥様は未だ納得しておらず、結論には至っていないとの事でした。私はE先生の疲れた顔を見ながら、白紙になってもしょうがないかなと思いながらR先生の昨晩の言葉をそのまま伝え、最後に「一点だけ私からお伝えしたい事ですが、先生の優先すべき事、元々なぜ退局を考えたのかだけお考えください。もう少し時間はありますから、奥様とよく話して結論は先生がなさってください。R先生も仰ってくれたので白紙に戻すのはその後にしましょう。」と告げてE先生からの返事を待つ事としました。

それから3日が過ぎ、やはりダメだったかと諦めなくてはと思い始めた頃にE先生より連絡がありました。それは意外にもR先生のクリニックに勤務したいとの内容でした。

「私が決断出来ないが為にR先生にもご迷惑をお掛けしましたので、もしもう一度了解を戴けるなら是非お願いします。もう二転三転する事はありません。」との事でしたので、決め手は何だったのかを聞くと、奥様を説得しようと話をしていた所、「一年の期限と言っても確約もないし、次に交代する先生が断る場合も考えられる。仮に戻ってこれたとしても再度遠方と言われた場合にまた同様の話となってしまう。選択は単身赴任するか、家族で転居するかではなく、残るか退局するかだと思う。それなら退局してほしい」と懇願されたそうです。先生は続けて「妻の言葉に妙に納得してしまい、自身でも再度考え直しました。今回提案してくれたのは元々あった話ではなく、YさんとR先生で私の為に作ってくれた話なので、今後他を探しても全て同じ求人は見つからないと思います。そうすると次に退局しようと考えた時は今回以下の条件での勤務となってしまい、必ず後悔するだろうと思ったんです。」とコンサルタント冥利につきる言葉をくれた。「では早速R先生に伝えて了承を貰ったら契約書の作成をしますね。」と私が言うと、「先日はお断りの話で詳しい条件を聞いてなかったのですが…」と質問された。「すみません。私も舞い上がってしまい肝心な事を忘れていました。条件は週5日勤務、年俸1400万円です。白内障のオペはR先生が教えてくれるので、少しずつ慣れてくれればとの事です。」と伝えたら、「宜しくお願いしますとR先生にお伝えください。了解を貰えたら契約の前に教授に意思を伝え、3月一杯で退局します。」と電話越しながら決断した事が感じ取れる言葉で言った。

その同日の内にR先生に連絡を入れると、「こちらこそお願いしますと伝えてください。」と気持ちよく了解してくれた。さらに、その翌日にはE先生より「教授に退局の意思を伝え、何とか了解を得ました。」と連絡があった。

そして、入職をされ5月に入った頃、E先生より「おかげ様で順調に院長先生とともに仕事をこなしています」と連絡があった。

今後、さまざまな先生の「優先すべき事」の選択に立ち会うと思うが、その先生にとって最善の選択肢を提案できるように誠心誠意取り組んでいきたいと思う。

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